乙女ゲームというものは、なぜこうも私の心をつかんで離さないものになったのか。

乙女ゲームを知っているだろうか。

乙ゲー(オトゲー)と略して呼ばれ、「私オトゲー好きなんだ」と言われ「私も好き!」と同意をした時に何か話が合わないなと思いよく考えてみたら、相手は音ゲーの話をしていたという苦い過去がある。しかしそんなことで嫌いになれるものではない。

私自身、どちらのオトゲーも好きだが、浅い知識しかないことは否めない。

そこまでのめり込んでやることはなく、気になるものがあればプレイして楽しむくらいであった。

今回も、数年前に遙かなる時空の中でシリーズをいくつかプレイした後、しばらく離れていたのだが久しぶりに欲がでてきたのでやってみようかと思いたった。(実際は、携帯ゲームのオススメがメールの案内できたことがきっかけ)

というわけで、早速「ピオフィオーレの晩鐘」と「collar×malice」のふたつを携帯アプリで購入しプレイした。

まずピオフィオーレの晩鐘を攻略し、その後に collar×malice (以下カラマリ)を攻略。

その際、正直ピオフィオーレの晩鐘の内容があまりにも良く(主にオルロックルート……)、どのエンドも話がじっくり進んでハッピーエンドもバッドエンドも心打たれた。バッドエンドにもこんなに時間を割いてさせるのかこのゲームはと、オルロックルートを終了した時に打ち震えた。最後の最後に攻略したが、本当につらかった……。

キャラクターは楊がすき♡ マフィアやカモッラが好きというと語弊があるだろうが、バッカーノがすきなのと、その繋がりで禁酒法時代に何かと胸が躍るのでこのゲームをやろうと決めたわけなのだが。本当に、ルートによってはバンバン主要人物も死ぬ。攻略キャラも死ぬしモチロン自分も死ぬ。

けれど、それ以上のつらさがオルロックルートにはあって、それが忘れられなかった。


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その衝撃を忘れられぬまま、カラマリを続けざまにプレイし始めたのも悪かったかもしれない。

岡崎、笹塚、榎本と攻略していく中でバッドエンドに物足りなさを感じつつも、彼らの過去の話と、強い主人公ちゃん、捜査に自分も入って考えられるかのような選択場面等に楽しんでいたのは事実。

いやーけどまぁやっぱりオルロックの話を超えるような内容はないかなーと、二週目から攻略解除された【白石 景之】の話に入った途端にその私の思いは怒涛の勢いで崩された。

今まで、ずっと主人公に向けても他の人に対しても飄々として自分の事を話さないくせに、相手のことを分析してボコボコ心を読んでくる白石が苦手であった。見た目もすきというほどではなかったし、ズケズケモノ言う態度も、それで傷ついているのに何も思わないのも、観察対象とか言いだすのも、いつもただヘラヘラ笑って受け流すのもムリだった。そう、【好きじゃない】というやつだ。

とりあえずは動画を見て頂こう。

カラマリの世界観をどうぞ。


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白石景之の姿を見ましたか? 見てくれました?

これすきになります? 彼顔負けの物言いで申し訳ないですが、白石さん29歳なんですよ。29歳であの恰好されて署内ウロウロどころか普通に区内を闊歩してるんですよ。信じられない。猫が飼えないという理由で!! 好きになる要素あります?

ないんですよ。それにあの性格ですよ。わー! すき! ってなる要素何一つみつかりゃしないの。ビックリ。容姿なら絶対に柳さんが一番ですよ。その彼を攻略するには白石さんを突破しなければならないので流れでプレイし始めたのが彼と接点をもつ機会となった。

 

もったらもったでスチルも集めたいのでちゃんと攻略はしようとしたし、話にも耳を傾けもした。

まーでも性格がアレなので、初めのうちは「ふざけんな猫耳野郎」と主人公ちゃんを押しのけて間に入りたい気持ちが続く続く。でも主人公ちゃんも強いので彼に言い返しもするし、一緒に仕事をするのだからと距離を近くしようと頑張るので本当にいじらしく、可愛らしい。

その頑張りもあり、白石さんが彼女に別の意味で興味を惹かれるようになって、ガチャガチャで猫のストラップを交換するところから神様視点の私も彼に惹かれていってしまった。

ただの興味の対象から徐々に引き上げされていくのを白石さん自身も気が付き始めてきた頃、彼の過去や生い立ちや現状がちらほらと見え隠れし始めてきた。はっきりとはわからないものの、何かの施設で人間のような扱いを受けずに育ってきたようであること、何か理由があって主人公ちゃんに近づいていること、それでも自分の中に芽生えて来た何かに抗えないこと、それが叶わないとわかっていてとてもつらいこと……。

ここまでプレイしてきた中で、怪しいところはあったし、意味深な場面も確かにあった。でも、いや何か絶対に裏があるはずで私が思っているような人ではないのだと思っている自分がいた。だから、この後も鬼の形相で白石さんの態度を怒る主人公ちゃんにも、手を繋いで笑い合う二人にもほっこりしていた。

初めの気持ちはどこへやら。中盤以降から彼に心奪われていく私がいた。

 

X-Day事件も終盤になった時、白石さんの正体を知った。

アドニス側の人だったこと、計画にために作り上げられた駒・人形であること、主人公をアドニス側に引き込む為に仲良くなるよう仕向けられたこと、主人公を裏切った白石さんを殺すことで首輪が外れアドニスの仲間になれること。

それだけではなく、理由はまだあるのだけれど……。

こうして主人公ちゃんを助けるためにという理由をつけて動いていた彼の気持ちたるや……。

今までは張り付けたような、用意していた笑顔だった彼が、いつのまにか主人公ちゃんには素の表情を出すようになっていたのに、首輪を外すには首謀者の意図をくまなきゃならない。自分が生きるよりはと思っていたけど、主人公ちゃんが許すわけもなく首謀者を撃ってしまうのだけど……。

同時に首輪の毒が注入されてしまい、白石さんは解毒剤があるのを知っていたから一命は取り留めることができた。けれども、後遺症のせいか記憶がなくなってしまう。

ここで! もう! 泣きそう!!

解毒して、看病のために地下の隔離施設みたいな場所で主人公ちゃんが目覚めるのを待って、やっと起きたと思ったら「誰ですか?」って訊かれるの。あまりにも切ないでしょう。これバッドエンドじゃん……と思いながら沈痛な思いで読んでたのよ。白石さんすきになってしまったもんだから、エンド最初見るのどっちでもいいやってやってたけど……。こんなにつらいとは……。

ぐっと涙を堪えてたのに、続く白石さんの悲哀のこもった笑顔で言った「君の主治医だ」にもうだめだった。ボッロボロ泣いてしまった。いつの間にか、こんなになるぐらい彼の事が【嫌いじゃなく】なっていた。

そして流れるエンディング……え!? エンディング!? てことはベストエンドがこれ!? 絶対嘘……こんなにつらい最期がベスト・ハッピーエンドだなんて認めないぞ……岡崎さんの時にも騙されたけど、本当に今回ばかりはどうにもならないじゃない……。

呆然としながらエンディングで流れる今までの思い出のスチルを見て、また泣いて、二人の今後に思いを馳せつつその後の話が来るのを待った。ここからどうするつもりなのかと思ったら、二人の医者・患者の関係が一年間続き、主人公ちゃんがだいぶ良くなってきた頃に地上に戻って柳さんたちに預けて、自分は自首しに行くのよ……。

その前に、約束した主人公ちゃんたちと一緒にクリスマスパーティーするの……あの白石さんがだよ……信じられない……。それだけ彼の心に深く食い込んだんだよね、主人公ちゃんとの思いが……。

自分の命は人生はアドニスの為に捧げてきたのに、彼女にはどうにか幸せになってほしい。主人公ちゃんを思う気持ちはみんな変わりなく持ってるし、自分よりも主人公ちゃんを! と思っているのは一緒。それぞれが過去に暗いものを持っているのも一緒。だというのに、白石さんにここまで惹かれるのはなぜか。

 

初めから彼を好ましく思っていた場合、ここまで気に入ることはなかった確率が高いのではないかと思う。落として上げるというやつでは。

たぶんそこが一番大きい気はする。

彼との初めの段階では、好意的なものがなに一つなかった(他の人も好意的ではなかったろうが、彼のように目に見えてというほどではなかった。笹塚もほんの一瞬程度)。驚くほど上辺だけ。好きじゃなかったから、そう見えたのかもしれないが、何かしてくれたとしてもそれを嬉しいとは感じられなかった。

それが、高いお菓子を買い与えられた時より、彼が考えて買ってきた動物型のクッキーを貰った瞬間が凄く嬉しくなった。

この時はわからなかったが、養成施設で育てられた彼は非効率的で無駄なことはしないタイプ。その人が、主人公ちゃんの為に自分の時間を割いて、なおかつ慣れないプレゼント選びをして、どうしてその物に喜んでもらえたのかわからないが主人公ちゃんが喜んでいるならそれでいいと納得する。

なんだそれ。そんなの誰でも好きになりますやん。

お近づきになるために、主人公ちゃんを喜ばそうとしたり気を引くように仕向けたりしていたのはわかっているが、それと同時に人形だった彼の心にも確実に積み重なっていくものがあったのだよ! わかるか!? その尊さが!! わかるであろう!

もう虜よ。

さらりと書くけど、主人公ちゃんは記憶を取り戻して白石さんが罪を償い終わるまで待っていることを約束して終わりなので、一応ハッピーエンドではある。

その後の話も「collar×malice unlimited」にてプレイ済みで、一体どんな始まり方なのかとドキドキしながらプレイしたが、さすがオトメイト。刑務所に入りながらも事件の解決を助ける役回りで、主人公ちゃんとアドニスの残党と対峙する話。

本編もそうなのだが、シリアスと恋愛パートはほぼ8対2。謎解きや捜査パートはなかなかに面白く、少ない恋愛パートは二人の距離感に神様視点の我々が見ていていいのか焦るほど甘い。さらに言えば、夜の話もあるわけでそういった行為があったのであろう事もわかる人がほとんど。

その中で、この白石景之はそれがない! 一切ない!! あってキス! のみ!

それがリアルでよい。知識として持ってはいるだろうし、やりかたもわかってはいるだろうけれど、人と接することをしてこなかった彼が主人公ちゃんと手を合わせるだけで幸せを感じるのだ。それがすべて。

(余談ではあるが、岡崎ルートではそれがあってこそ彼を引き立たせている感もある。形のないものを信じることが難しいと何度も言っている彼が、形のあるものにこだわるのは良くわかる。だからこそ主人公ちゃんとの距離が近く、体を重ねることに安堵を感じるのだろうな)

 

白石さんを【嫌いじゃない】理由はそんなところ。

また、この主人公ちゃんには弟くんがいる。香月くんという子で、これがまたかわいい。個人的に弟属性がだいすきなのですきにならないわけがない。

もちろん血が繋がっているので、どうにかなることはないが、家族仲が良いと言えない状況で始まるので二人の仲を修復する話が埋め込まれているわけだ。デレる香月くんが見れる。ツンケンして罵詈雑言かけてくる香月くんに心を痛めるのがほとんどであるが、後半の香月くんのかわいさといったらまぁーない。

アンリミでは香月くんのスチルもあるので眼福もの。ありがたい。本当にかわいい。

主人公ちゃんの家族との確執の話も垣間見えるので、香月くんの話はなかなかに私は好みである。

 

現在、アンリミで主要人物は攻略終了し、なんとアドニスサイドの話ができるということでゆっくりプレイしているところ。首謀者が誰かも知っているので、こちらも辛い話になりそうかなと感じているところだが、どんな収束を見せてくれるのか楽しみでもある。

主要人物である攻略対象者たちにはキャラソンなるものがあるようなのを最近知って、サブスクがあるのをいいことに一日中聴いている。白石さんのしか聴いていない。切なくてだいすき。彼がどんな思いで主人公ちゃんと付き合っていっているのかを感じられるので、没入できる素晴らしい曲だなと思う。

最期はそちらを掲載して終わりにする。

久しぶりの乙女ゲームがこんなにも楽しい時間になったことに感謝! オススメとしてメールに載せてくれたことでここまで発展するとは思わなんだ。楽しい夏を過ごさせて頂いた。あともう少し、カラマリの世界観に浸らせてもらいたい。


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Little Love Song

Little Love Song

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 背中合わせなのが彼だけなのもエモい。

最高だぞ白石景之。ありがとう白石景之。嫌いじゃないぞ白石景之。